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Sasieniの初期のパイプに関するdatingは少々頭を捻る必要がある。時系列的には 1) One Dotともにブランドが出発したのが1919年、 2) 1920年代中期のFour Dotインレイの導入、3) 1927年のEight Dotインレイの開始、 4) 1928年の"Town Name"の導入、という順になる。このパイプはFour Dotをインレイされながらも未だシェイプナンバーを備えていることから、2)と4)の間に生産されたパイプと安全に断定することができるだろう。
Sasieniの歴史の中でも初期に生産されたラスティック・パイプだが、この当時はまだFour Dotという呼称は与えられず、単に"Sasieni Rustic Briar"と呼ばれていた。そのラスティック・テクスチャも多くの人に馴染みがある戦後のパイプのものとは大分表情が異なっている。とはいえ、そのアピアランスは重厚にしてソリッド、現在モダンパイプを見慣れた目から見てもまったく古びた印象はない。最初期からSasieniのラスティック技法が非常な完成度を見せていた証となりえるだろう。
Rはこの当時、Town Nameが導入される以前に使用されていたモディファイヤでラスティックフィニッシュを表す。後年Town Nameが導入されると同時にファーストラインでは使用されなくなるが、Old Englandラインなど引き続き使用されることになる。
30は小ぶりでスマートなビリヤードである。戦前からFamily Eraを通じて、Sasieniは常にアグレッシブなシェイプ製作を行ったメーカーであったが、ことビリヤードに関しては非常に保守的な洗練を見せていると言える。この30Rもごくごくスタンダードな取り回しのよいシェイプである。
戦後のものに比べ彫り幅が広く、深さも深いことが一目で理解できるだろう。シェイプアウトを極力抑えながら、グレインに沿った大きな彫りのファーストタッチと、そこにほぼ45度の角度で交差する細かいセカンドタッチで精密さを表現するというSasieniのラスティック技法のコンセプトが明瞭な形で現れたサンプルとなっている。
このパイプにはUK PAT. No 150221/20のアルミ製フィットメントは付属していなかったが、テノンはフィットメントを備えるパイプ特有の無段テノンとなっている。エンジニアリングは非常にソリッド。リップ開口部も広く、ビットは戦後のものに比べると少々厚めだが極めて快適である。
このパイプは珍しく、Four Dotのインレイに失敗してやり直した跡がある。おそらく最初にインレイしたブルーエボナイトのロッドに不純物でも混じっていたのではないだろうか。MADE IN ENGLANDの刻印は有名なラグビーボール型ではないが、限られたスタンプエリアしかもたないパイプにはよく見られるディテイルである。
shape 30 : billiard
stem: handcut vulcanite
junction: normal
color: plum rustic
ornament:none
length:147mm
height: 40mm
chamber dia: 18mm
chamber depth: 34mm
weight: 29g
nomenclature:
Saisieni(fishtail script)
LONDON MADE
PAT. No 150221/20
MADE IN ENGLAND (straight stamp)
30R
blue Four-Dot inlaid logo aligned in diamond shape on near sides of the stem
note:
・ニアミント