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Eight Dotは、アメリカ市場でのFour Dotのヒットを受け、当時Sasieniパイプを米国に輸入していたJ.B.Russelの、スモーカーのどちらの側に立ってもこの独特なロゴが見えるようにして欲しい、という要望から1927年に導入されたグレードである。世界情勢が緊迫する中、物資調達や歩留まりの点で問題があり(※1)、1938年に廃止された。
このパイプはEight DotのAshford。AuthorのAshfordは1936になってから導入された(※2)シェイプなので、事実上このEight DotはAshfordコレクションに於ける最高峰であり、同時にAshfordの登場当時の姿を現在に伝えている。Eight Dotが生産終了になる僅か二年の間に製作された極度にレアなサンプルでもある。
Eight Dotはブライヤーのクオリティの上でFour Dotと差はないが、Sasieniのラインナップの頂点であり、コレクター達が切望するパイプである。かつてJoel Sasieniも、Alfred SasieniもEight Dotを所有することは決してなかったという。彼ら偉大なパイプメイキング父子が心血を注いで作ったハイエンドパイプを所有することは、はるか後の時代を生きる我々にとって非常に感慨深い。
Sasieniは年代によってかなりシェイプの形状に変遷があることは以前にも述べた。このサンプルは戦前、おそらく最も初期に作られたAshfordであり、そのオリジナルのコンセプトがよく覗える。非常に強い丸みを帯びたボウルと、ややテーパーがかったヘヴィなシャンク。ステムはやや中央よりでベンドする、非常にクラシックなスタイル。素晴らしく魅力的なAuthorシェイプ。リムは後年のAshfordとは異なり、インナーリムがべべルされていないことに注目。
戦前のSasieniのOne Dot, Four Dot, Eight Dotのフィニッシュには、標準的なプラムカラーのほかに、このサンプルのようなオレンジ系ステインのナチュラルフィニッシュが存在した。グレインには特に目立ったものがあるわけではないが、非常にコクのある美しい染めあがりを見せている。
Eight Dotを構成する、ライトブルーのエボナイトロッドをインレイされたスポットの直径は、1950年近辺までのFour Dotと同じであるが、ダイヤモンドシェイプがFour Dotのものよりやや小さくなっている。ステム両面のドットの位置は一分のズレもなく左右対称に配置されている。ステムのtenon内部には、Pat No.1513428のアルミフィットメントをインサートするためのネジ山が切ってあるので、オリジナルのステムであることが分かる。
後年(1970年代?)のFour Dot "Ashford"との対比。クラシックなEight Dotのボウルがかなりファットなものであることがわかる。
shape#:Ashford S
stem: handcut vulcanite
junction: normal
color: natural
ornament:none
length:135mm
height: 38mm
chamber dia: 20mm
chamber depth: 30mm
weight: 50g
nomenclature:
Sasieni(Florid Script, Fishtail logo)
LONDON MADE
Pat No.1513428
MADE IN ENGLAND (football shape stamp)
"ASHFORD"
light blue Four-Dot inlaid logo aligned in diamond shape on the both sides of the stem
note:
・小さなハンドリングマーク以外ほぼ完璧なコンディション
(※1)Four Dotをインレイする作業は想像以上に手間のかかることであり、Eight Dotの導入によりSasieniの工場の作業効率はかなりの落ち込みを見せたという。
(※2)1936年プライスリストより。Ashfordは"NEW"ページにカテゴライズされており、この年に新発売されたことがわかる。同時期に導入されたシェイプには他にHighfield, Melton, Reigate, Smallgateがある。