Dunhill Bruyère 49c Horn“INNER TUBE” Patent (1919)

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description:

1919年に使用されたいわゆる『アーチド・ダンヒル』スタンプを持つ非常に古いBruyère。(後述するがこのアーチド・スタンプには二種類のバリエーションが存在する。)シェイプも非常に珍しい、49cとナンバリングされたスモールサイズのHornシェイプである。

経てきた時の痕跡がそこここに見られるが、それを考慮に入れても美しいパイプだと思う。曲線の具合のせいかラウンドシャンクのせいかはわからないが、これだけの小型パイプでここまでマッシブな印象を与えることができるのは見事。

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Alfred Dunhill 49c shape execution :↑

ホーン/ホルンというシェイプはモダン・ハンドメイドパイプのシェイプという印象が非常に強いが、実はクラシックシェイプの中でも相当古い時代から存在するもので、早くも19世紀末にはサンクロードで類似のシェイプが作られている。また、Lane時代以前のCharatan'sはこのHornシェイプを得意としていた。Alfred Dunhillのシェイプチャートでは83番のZuluシェイプのほうがポピュラーではあるが、この49番はDunhillにもHornが存在していたという明確な証拠足りえるだろう。47番テーパード・ブルドッグ、48番サドル・ブルドッグの次にくるシェイプナンバー。末尾のcが何を意味するのかは現在のところ不明であるが、ナンバーの前にくるChurchwadenを示す大文字のCとは厳密に区別するべきであろう。

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Briar texture of Bruyère:↑

このパイプが作られてから既に90年近くの時が経過したわけであるが、ボウルの状態はかなり良い。それでもBruyèreのプラム・ステインはほとんどが剥落してしまっている。戦前のBruyèreの常で、グレインには特筆すべきものはないが、ホリゾンタル・クロスカットと呼ばれる、ボウル前面にバーズ面を出す工夫がなされているようだ。

 

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Engineering & Details of Bruyère:↑

(上)この時代にはまだAlfred Dunhillにターニング・セクションがないため、他のパイプメーカー製のボウルだと思われるが、マウスピースのフィッティングはさすがに見事。

(中)初期のDunhillに典型的な、セミ・オリフィックのリップ。リップを形成する楕円、そしてエアホールの形状が強い丸みを帯びているのが特徴である。

(下)ホワイトドットは径の小さな象牙製のもの。やや緑味がかかり、そして周囲が経年変化でこの写真のように赤く変色するものが多いと思う。

 

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Nomenclature & Stamping:↑

(上)メーカーマークサイドの刻印。フィニッシュコードのAは、このサンプルでは円に囲まれている。

『アーチド・ダンヒル』刻印には二つのバリエーションがあり、アーチを形成するDUNHILLのアーチ内にLONDONがもぐりこんでいる初期(1919 1/3から1919 5/20まで)、アーチのDUNHILLとLONDONが同じ長さの後期(1919 5/21から1919年末まで)が存在する。この個体は後期。

(下)P.O.Sサイドの刻印。"INNER TUBE"の刻印とPatent刻印が見られる。PATENTED MARCH.9.15の刻印は1915-1923年の間使用された。 Date Codeが採用されるのは1921年になってからなので、当然ながらこのパイプには存在しないが、もしDate Codeがあったとしたらファクトリーにストックされていたパイプか、リペアを受けたパイプである可能性が考えられるだろう。

 

 

 

shape: 49c Horn
stem: Vulcanite
junction: normal push tenon
color: dark plum (faded)
ornament:none
length:126mm
height: 42mm
chamber dia : 19mm
chamber depth: 38mm
weight: 28g

nomenclature:
A (encircled)
/
DUNHILL (Arched over)
LONDON (eql.length as DUNHILL)
/
MADE IN ENGLAND
"INNER TUBE"
PATENTED MARCH.9.15
/
49c(in circle)

white dot on the stem

note:
・ハンドリングマーク多数
・ステイン退色