Barling's Make A/M Billiard N.Yorke Gateshead (1919)

description:

シルバーアーミーマウントのパイプはPre-Trans eraのBarlingが得意としたシェイプである。このBarling's Makeもそんな20世紀初期のBarlingに典型的なアーミーマウント・ビリヤード。ホールマークによれば1919年の製品である。N.YORKE GATESHEADの刻印があるが、かつてBarlingはイギリス国内の多くのタバコニストと契約を交わし、その店特有のスタンプを押印したパイプを卸していた。これもそのうちの一つで、イングランド北部の町ゲイツヘッドに存在したN.YORKEというタバコニストで販売されていたと推察ができる。Pre-Trans期をしめすNichols Shape Number(3桁シェイプナンバー）はこの時代にはまだパイプに刻印されてはいなかったようだ。同様にサイズコードも存在しないが、S-M相当の小さなパイプである。マウスピースは1920年代ごろの製品にまで見られる、オリフィック・タイプと呼ばれるシングルホールのもの。非常に小さなパイプであるが、Pre-Trans期の樹齢を経たブライヤーに助けられて素晴らしい喫味を誇る。

 

Barling A/M billiard shape execution :↑

ハンドターニング特有の温かみのある曲線を持ったボウル。やや背がひくく、丸みを帯びているのが特徴的か。Barling Crossの刻印が見られない（バフアウトされた？）テーパードステムは、上下でやや形が異なっていて、シェイプに与える印象に強いアクセントを付けている。やはりBarlingのパイプらしく、ごくわずかにシャンクがテーパーしているのもポイント。

 

Briar texture of Barling's Make:↑

樹齢百年以内のブライヤは使用しなかった（とりわけYe Olde Woodと呼ばれるディジグネーションを持つパイプには、さらに古い、樹齢二百年近い原木が使用されたとされる）と言われる、Pre-Trans Barlingのブライヤテクスチャ。グレインはほとんど坊主に近いが、とても風格のあるクロスグレインである。オリジナルのフィニッシュはほとんど剥離してしまっているが、元はプラム・フィニッシュであったと想像できる。
（下）リムのアップ。少々のアウトラウンドが見られるが製作年度を考えれば出色の状態であるといえるだろう。フルフラットでベベルの施されていないインナーリムもBarlingの製品の特徴である。

 

Engineering of Barling's Make:↑

驚異的にスムーズなドローをもたらす、Pre-Trans Barlingのエンジニアリング。（中）この時期特有のシングルホール・オリフィック・ボタンのアップ。ビットは丸みが強く歯での保持がしにくいが、リップの造作が大きいので比較的快適。（下）写真ではうまく表現できていないが、シャンク内のテノンはそのままゆるやかにテーパーしていき、シームレスに煙道となってボウルに接続する。これもPre-Trans eraのBarling特有のエアフロー・コントロール・テクノロジーの一環であろう。

 

Pre-Trans Barling additional stamping:↑

シルバーアーミーマウントに刻印されたホールマーク。左からデートレター、スタンダードマーク、シティマークとなる。デートレターはアルファベットだけではなく、字体によっても年度が異なってくるので精査する必要がある。この時期はゴシック体スクリプトが使用されていた。